大凡のギタリスト、ニシイケタカシによる
三度目の雑記。
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ジャズを飲み込む/もう常体で定着しつつある

 4/19(水)赤坂グラフィティでのイベントにお越し下さった皆様、ありがとうございました。久しぶりのロック箱で大きな音量で演奏できたのはとても楽しかった。それはよかったけれども集客具合はなかなかキビシー状況。無意識の過当競争が煮詰まった感もある東京アンダーグラウンドの局所だからこそ、我々の活動にもっと興味を持ってもらえるよう知恵を絞っていかねばならない。何とか立て直したいと気持ちもあらたに。

 そんな当夜、久しぶりに(調べたら二○十五年二月以来だった)共演したNostaramaの演奏がとても素晴らしくて終始興奮させられ通しだった。Nostaramaはフォービートやシャッフルのリズムを中心にジャズライクなコードアンサンブルを自在に展開するジャズファンクの辣腕グループと言って差し支えないかと思う。余談だが彼らの地元は横浜。これだけの説明だと、もしかしたら少々身構えてしまう貴兄もいるかも知れない。かく言うワタシもいい歳をしてジャズには偏見と警戒心を少なからず抱えているリスナーだという自覚がある。にもかかわらず、Nostaramaを観てあんなに興奮したのは、俗にいう「ジャズっぽい」とされる音楽をそれなりにではあれ、いつの間にか「飲み込める」ようになっていたからなのかも知れない。もしそうなら自分は「ジャズっぽい」音楽をどうやって「飲み込める」ようになっていったのか、ちょっと考えてみた。

 私的観測で九十年代の初め頃、大凡マンチェ旋風のやや後くらいに所謂アシッドジャズブームとかがあって、多分に漏れず、ワタシはインコグニート、ブランニュー・ヘヴィーズ、等々のクラブジャズと呼称された音楽のレコードを棚の肥やし的に〈密かに〉ポツポツと購入したりしていたクチだった。とりわけクラビングに精を出したわけでもなく、でも幾度かは通って何となく周辺事情をくゆらしたり、『Kind Of Blue』も急いで聴いたけどモードとかよくわからなかったり、あまつさえ「ジャズとの距離のとり方がさあ」とか何とか言ったりしてサムシングわかった風をふかしたりしていたような気もする。要するに二十代に散見する軽薄で自意識過多の関西人だった。それでも「ルパン三世」をはじめとする大野雄二作品や、YMOからの捻れた文脈で消費していたカシオペアなどのクロスオーバージャズ関連、「ヒットソング」としてそれらに親しんでいたことで「ジャズっぽい」ものを「飲み込める」ための基礎聴力のようなものを多少は持っていた気もする。

 当時の景気の動向も政治や社会の有り様も見えていないのに気分だけはマイノリティで浮かれていた。九十年代は楽しかったが、ロックバンドをやることが生活の中心になってゆくにつれ〈○○として振る舞わなければならない〉といった原理主義的な何かに引きずりこまれていった。音楽を美味しく「飲み込む」振る舞いがともすると「悪」となり、それまでに多少なりとも持ちあわせていた基礎聴力に抑圧をかけていたことは残念ながら否めない。そうだ、そして抑圧を抑圧だったと客観できるようになるのは、生活の中心だったロックバンドが頓挫したときだった。何という遠回り。しかし、またワタシは性懲りもなくあらたなロックバンドを始めることになる。ジャズを美味しく「飲み込める」ことはまた先送りになってしまったのだろうか。

 あれから幾星霜。ブラックミュージックはもとより、守備範囲としているつもりのロックの体系も歴史認識もまだまだ茫漠としているような中年チンピラのワタシが、いまだに何とか音楽を続けている(いられる)所以は、経年によるそれなりの動体聴力(ムラはあるが)と、まだ辛うじて旺盛な妄想によるところくらいだろう。こんな脆弱な装備しかないままではあと何年できるか甚だ怪しい。だがおかげさまで抑圧はもうない。ジャズもロックももっとたくさん美味しく「飲み込み」たい。そのためにも、歳をとった今こそ「勉強」したい。ともかくこんな駄文長文を書くことになるまで興奮させてくれたNostaramaに感謝しなければ。また是非お手合わせ願います。

 

■5月21日(金)@国立地球屋
出演:山本慎也ブルースバンド、Berry、双六亭
開店 19:00 / 開演 19:30
チャージ:¥1,000 (+1drink order)

■5月27日(土)@池袋鈴ん小屋
『XTCトリビュート2017』
トーク:鈴木さえ子(音楽家)、麻田浩(トムス・キャビン代表)
ライブ:ETC(ニシイケタカシ、北山昌樹、Yonafy)
島へ行くボート(安部OHJI、Yonafy、小澤亜子 、黒田佳宏)、
アコースティック5mm(堀尾忠司+赤尾光代)
※総合司会:小暮秀夫
開場 11:30 / 開演 12:00
前売¥2,800 / 当日¥3,000(+1drink order)