大凡のギタリスト、ニシイケタカシによる
三度目の雑記。
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大人になるということ2

 さて、年齢と風体だけを見れば、大人(というか立派なおっさん)となってしまった今、「傷付くこと」なんぞ華麗に乗り越えているのかというと、全然そんなことはありません。むしろ「傷付くこと」に包囲され兵站を断たれて虫の息といった所でしょうか。そもそも大人の日常は「傷付くこと」のインフレがデフォルトみたいなものなのだ、と気付くのが、ワタシはどうやら遅かったようであります。ああ、もはやこれまでか。

 いや、このまま傷だらけで息絶えるのも忍びない。何か手立てはないものか。そうだ、そういえば人は元来「傷付くこと」を駆逐するカンフルを自らに備えていると聞いたことがあります。なんでも、それは「忘却」と「上書き」という名前のとても強いクスリで「傷付くこと」を、個々人に最適化した物語へと変換し、虚構に支えられた平穏な日常を与えてくれるそうではありませんか。ああ、よかった。ひと安心だ。これで大人になれそうです。

 ここでひとつ注意しなければならないのが、このクスリの濫用は「不感症」という副作用をはらんでいる点だそうです。哀しみ、喜び、怒り、恐れ、など、厄介な感情で取り乱したりすることがなくなる代わりに、抑制された不可逆な日常の獲得。いわば音のない世界での暮らしですね。ああ、何だか静かで快適そうだ。

 さて、副作用の兆候を感じられたなら、しめたものですね。これであなたもワタシもやっと立派な大人。さあ、「忘却」と「上書き」を濫用しまくって「不感症」のフェイズへ沈み込みましょう。ワタシはひと足お先に音のない世界でお待ちしすることにします。でわ。

つづく